こんにちは、久々の映画レビューです。今回は、マーティン・スコセッシ監督の最新作『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』を先月劇場にて観賞。
本作は、スコセッシ監督による重厚なドラマで、アメリカの歴史的な出来事、1920年代初頭のオクラホマ州で発生したオセージ族の人々が巻き込まれた一連の殺人事件と、その影に潜む腐敗と陰謀を描いている作品です。

登場人物たちの心理的な葛藤や道徳的ジレンマ

作品のもとになるのが原作「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」です。
こちら、映画鑑賞後に読んでみましたが、映画同様に面白く、映画はかなり忠実に再現されているなぁという印象でした。
ただ、原作では事件を捜査する元テキサスレンジャーの特別捜査官トム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)の視点で事件が語られますが、スコセッシ監督は捜査官視点ではなく殺されたオセージ族の奥さんの旦那アーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)の視点で描かれているところがさすがと言ったところ。

スコセッシ監督の過去の作品と本作の共通する作風は、緻密なストーリー展開とキャラクターの心理描写に重点を置いた作風が特徴的です。例えば、彼の作品である『グッドフェローズ』や『カジノ』と同様に、本作も登場人物たちの心理的な葛藤や道徳的ジレンマを掘り下げています。スコセッシ監督は犯罪と権力の裏側に潜む人間ドラマに焦点を当て、観客に深い感銘を与える手法を巧みに用いています。

『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』の緻密な脚本とキャラクターの心の揺れ動きは、視聴者に強烈な印象を与えています。特に、スコセッシ監督常連のレオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロの共演は圧巻で、彼らの演技によって、時折冷酷でありながらも人間臭い一面が浮かび上がり、登場人物たちの複雑な心情を表現しています。
こういったところは、常に俳優との共同作業に重点を置くスコセッシ監督の手腕なのかなぁと感じました。

また、音楽と映像もスコセッシ監督の作品に欠かせない要素で、『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』でも、監督と縁が深いロビー・ロバートソンによる時代感を醸し出す豊かな楽曲が効果的に使われており、監督の映画において音楽は、物語やキャラクターの感情に深い影響を与え、観客に強烈な印象を残すのに一役買っています。映像においても、カメラワークの巧妙さが光り、視覚的な美しさと物語性が見事に調和しています。

最後に、『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』は、歴史的な事件をベースにしながらも、人間ドラマと権力の腐敗を描く彼の独自の作風が、観客に深い感動と考えさせられる時間を提供してくれる心に残る一本となりました。スコセッシ監督の傑作の一つと言っていいと思います。
ちなみに終盤のチョイ役で元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが出てくるところは個人的にツボでした!